最近、働き盛り世代の収入が25年前と比べて100万円以上減っている、という報道がされています。
バブル崩壊以来、日本人の給料が上がっていないことはたびたび議論され、そのたびに悲しい気分にさせられます。
国税庁からデータをダウンロードし、民間給与の推移を年齢別・男女別にグラフ化してみました。
グラフ化することで、いろいろな傾向がわかりやすくなります。
本記事では、作ったグラフを紹介します。
最近ニュースになったのは、働き盛り世代(45~54歳)の給料が25年間の間に195万円も減ったというニュースです。
これは世帯収入に関する調査結果で、個人の給与がそんなに減ったわけではありません。
とはいえ、世帯収入であっても195万円の減少というのは、尋常ではありません。このことについては、政府資料を詳しく見ながら、その根底にある社会構造の変化について前回記事で議論しました:
前回記事:「働き盛り世代の年収が25年前より100万円以上減少」問題の根底にある社会構造の変化
この195万円減少というニュースの詳細が、私にはすぐに見つけられませんでした。
該当記事を見つける前に、自分で政府資料を当たって日本人の給与の推移を調べてみて作成したのが、今回紹介するグラフです。
ですから本記事で紹介するのは、世帯収入でなく、個人の給与についての調査結果です。
データの出典は、国税庁による民間給与実態統計調査です。
調査の詳細は、国税庁のホームページを参照いただければと思いますが、要点は、
国税庁で公表されているデータは、巨大な表にまとめられています。
その表から数字を読み取ってグラフ化した図をいくつか紹介します。
民間事業所の給与所得者の平均給与をグラフにしたのが次の図です。
広く知られている通り、日本人の給与は高度経済成長期からバブル期にかけて急速に伸びたあとで、1990年ごろからの30年間横ばいです。
ただし、詳しく見てみると、過去22年間で平均給与は11.6%も減少していることがわかります。
同じく、民間の給与所得者数を次に示します。
給与所得者については、1972年以降のみ表示しています。
1971年より前もデータは載っていましたが、表中での人数の表示フォーマットが違ったため、表示していません。
この調査では、事業所での勤続年数が1年未満か1年以上かで、「1年未満勤続者」、「1年勤続者」と分けて統計を取っています。
1年未満勤続者は1年分の給与でないため、まるまる1年間働いた給与が反映される1年勤続者と比べて、給与額が低い結果になっています。
ここから先では、1年勤続者の統計をみながら、男女別、年齢別の給与の変遷を見ていきましょう。
次に、男女別で労働人口と給与を見ていきましょう。
次の図は、の民間事業所での1年勤務者の人口の推移を、男女別に示したものです。
女性の労働者数が増加し続けていることがわかります。
さらに、全労働者数に対する女性の割合を計算してみると、次のようになりました。
男女の平均給与の推移をグラフ化したのが次の図です。
2020年の男性の平均給与は5,322,000円、女性は2,926,000円で、1.8倍の違いがあります。
この調査では、正規・非正規の別、常勤かパートタイマーかの別を区別しないで集計していることは注意して理解する必要があります。
次のグラフは、男女の平均給与を、年齢別に示したものです。
データが多すぎると見にくくなってしまうので、10代と、20,30,40,50代の後半の年齢層のみを比較しました。
これだけデータを減らしても、データが多すぎる印象はありますが、青系のデータ点は男性、暖系のデータ点は女性です。
女性が男性よりも給与が低いのと同時に、男性は年齢とともに給与が上がる傾向があるのに対し、女性は年齢が上がっても平均給与はあがらない傾向がわかりました。
前節で述べた通り、男女間で雇用形態の違いも大きいだろうことは考慮しながら理解すべき結果です。
次に、年齢層ごとの給与額の推移を描いたグラフを紹介します。
上から、男女合計、男性、女性、のグラフです。
全部が一望できるグラフのつもりでだいぶ苦労して作ったのですが、データが多くてずいぶん煩雑になってしまいました。
60歳以上のデータは、2007年から統計を開始したとのことで、それ以前はありません。
就職氷河期は1993~2005年です。
この時期に大学を卒業した1970~1982年の世代を「ロスジェネ」と呼ぶそうです。この調査が行われた2020年には、38~50歳の世代です。
せっかくグラフをたくさん作ったので、ロスジェネの実態について、なにかヒントが潜んでないかと思ったのですが、データの解釈はやはり難しいです。。。
ひとつだけ気が付いたヒントかもしれない薄気味悪い現象は、次の図(男性の平均給与推移)に赤い楕円で書き込んだ部分の現象です。他の世代で給与が増加傾向であった2016~2019年の間に45~49歳が、2010~2015年の間に40~44歳が、給与が増えていません。そして、この世代は、ロスジェネの初期に相当します。
ロスジェネの実態は、前回記事で紹介した令和4年第2回経済財政諮問会議でもっとわかりやすい調査結果が紹介されています。次の図は、諮問会議資料から転載した図です。
本記事で紹介してきた調査とは別の調査データですが、誕生年グループごとに年齢にしたがって実質賃金がどのように増えたかを示した図です。カッコ内の数字は、25~29歳時点での実質賃金額で、この額を100としたときに、別の年齢に達した時の賃金を縦軸に表しています。
この図はロスジェネ初期世代が44歳までのデータしかありませんので国税庁データよりも調査期間が短いものの、給料の伸びが後の世代ほど悪くなっていることを一目瞭然で見て取ることができます。
国民が豊かになる政策の転換が、急務です。
国税庁による民間給与実態統計調査のデータを使用し、男女別・年齢別の民間平均給与の推移をグラフ化しました。
グラフを作成しながらわかった傾向は以下の通り。
ただし、この調査では正規・非正規の別、常勤かパートタイマーかの別を区別しないで集計していることは注意して理解する必要があります。
最後に、前回記事”「働き盛り世代の年収が25年前より100万円以上減少」問題の根底にある社会構造の変化”では日本の世帯収入が激減していることについて分析してわかったことをまとめました。
合わせて読んでいただけると幸いです。