西野武彦(著)「世界で最も読まれている株の名著10選」(日本経済新聞出版社)を紹介、レビューする。
この本は、これからもう一歩先に踏み出したい投資初心者の私には、とても参考になる。
この本の購入を検討されている方の参考になるようならうれしいと思うし、 なにより私自身の頭の整理にもなるので、内容の紹介とレビューをする。
読中ながら、もっとも興味がある章はだいたい読んだし、むしろ熱中して読んでいる最中だからこそ、印象が強いいまのうちにレビューを書きたいと思った。
著者の西野氏は、経済ジャーナリストである。
「世界で最も読まれている株の名著10選 」は、世界的に読まれてきた投資本のベストセラーを紹介する、という感じのタイトルに聞こえる。が、単に10冊の名著を紹介するというよりは、それらを書いた10人の投資家たちの人物、人生と投資スタイルのほうに、より強くスポットライトを当てて書かれている。
伝説の投資家たちの人となりを、経済評論家の著者が熱っぽく語る中から、それぞれの名著を読んだら得られるであろう知識の方向性が浮かびあがる文章になっている。
だから、読んでいると、勉強したい!という意欲をかき立てられる本である。
私自身は、これまでやってきたインデックス投資だけでなく、もう少し主体的な資産運用に踏み出したいところ。なにから勉強すればよいか悩んでいるときに本書を手に取った。
また、ちょうどピーター・リンチやフィッシャーなどの名前を知るようになりだしたばかりだったこともあり、投資家たちの人物伝は読んでいてとても面白い。
「初心者にも比較的わかりやすい本」など、これから読む本を選ぶヒントになるリストをいくつか用意してくれているのも、投資本選びに役立つ。
メインに紹介される10冊がどういうラインナップなのかは、気になるところ。私自身は購入を検討しているときに、サイズの大きい表紙画像が見つからなかったため、紹介されるであろう10冊のうち半分くらいのタイトルしかわからないまま購入した。
本書は10章からなっており、各章のタイトルは、紹介される本のタイトルになっている。
序章 名著を読む前に知っておきたいこと
第1章 予言の的中率ナンバーワン!ウィリアム・ギャンの『株価の真実』
第2章 空売りで巨万の富を築いた『世紀の相場師ジェシー・リバモア』
第3章 バフェットが師と仰ぐベンジャミン・グレアムの『賢明なる投資家』
第4章 成長株投資の先駆者『フィッシャーの「超」成長株投資』
第5章 激論を巻き起こしたバートン・マルキールの『ウォール街のランダム・ウォーカー』
第6章 著名投資家が数多く登場するジョン・トレインの『マネーマスターズ列伝』
第7章 独特の銘柄選びを提案する『オニールの成長株発掘法』
第8章 伝説のファンドマネジャー『ピーター・リンチの株で勝つ』
第9章 ウォーレン・バフェットに学ぶロバート・ハグストロームの『株で富を築く バフェットの法則』
第10章 異色のバーゲンハンター『テンプルトン卿の流儀』
ただし、先にも述べた通り、著者は各章で1冊の書籍を紹介するだけに始終するつもりはなかったようだ。
たとえば、バフェットやグレアムの章では、それぞれ「バフェットからの手紙」と「証券分析」もずいぶんな熱意をもって紹介されている。
単なるブックレビューの書籍ではない。20ページほどの序章は読みごたえ十分だ。
著者は経済評論家であり、紹介される10名の著名投資家の書物の多くを読んでいる様子。その経験から、複数の著書を著している投資家の書籍の中では、最初に出版した本がもっとも出来が良いと断じている。この考察が実に説得力がある。
私自身、ピーター・リンチの書籍を読んでみようと思いったものの、複数あるリンチの著書のうちどれを購入すべきか、悩んでいた矢先にこの序章を読んだので、大変参考になった。
序章の最後には、どの本から読もうかを決める参考になるリストがいくつか用意されている。これらリストの表題を列挙すると以下の通り。私はしばらくの間は、投資本選びのたびに眺めることになりそうだ。
何度も繰り返すようだが、書籍のタイトル「名著10選」から予想される単なるブックレビューより、はるかに読みごたえがある本である。
有名投資家の人物、生涯を描写するなかから、その投資家の投資スタイル、名著の内容が浮かびあがってくる構成を取っている。
著者が思い入れのある投資家を取り上げているのだから、記述には熱もこもっており、読み応え十分である。ただし、1章あたり約30ページにまとめられているため、一人ひとりの投資家の人物伝を長すぎることなく読むことができるようになっている。
各章が独立に書いてあるため、もっとも興味ある投資家についてだけ読むこともできる構成になっているのも読みやすいところだ。
取り上げられている10名の投資家について、著者はそれぞれ違った思い入れがあるのだろう。各章の構成はバラバラで、それがますます著者の投資家たちへの思い入れを感じさせるところだ。
単なるブックレビューでない、と繰り返し言ってきたが、では具体的にどんな内容になっているのか。
次の2つ節では、この本の第8章と第9章の節構成を例に、一冊一冊の名著(または、一人一人の伝説の投資家)について、どのような記述になっているのかを紹介する。
第8章「伝説のファンドマネジャー『ピーター・リンチの株で勝つ』」の節構成は以下の通り。カッコ内はそれぞれの節に割かれたページ数。
1.が『株で勝つ』の紹介。2.3.はむしろ、ピーター・リンチの人物についての記述だ。本の紹介よりも投資家の人物描写に多くのページ数を割いているのがわかると思う。
ウォーレン・バフェットを扱った第9章「ウォーレン・バフェットに学ぶロバート・ハグストロームの『株で富を築く バフェットの法則』」の節構成は以下のようである。
バフェットは、自身で書いた著書はなく、「バフェットの法則」もハグストロームというバフェットの信奉者が書いた書籍とのことである。
第9章のタイトルは『バフェットの法則』とあるが、とくにこの章に関しては、書籍の紹介は控えめである。2.がハグストロームの人物と『バフェットの法則』の紹介的な節だが、3.では著者が賛同しない『バフェットの法則』の記述に関して、著者自身の見解が披露されている。
1.と5.は『バフェットの法則』とは関係なくバフェットの人物を描いた節だし、4.では別のバフェット本の紹介までしている。
以下は、楽天ブックスでの取り扱いページへのリンク。
更新記録
2020年10月10日 「エスプレッソなおうち」へ移転。
2020年9月12日 「lulutheblackcat’s blog」にて公開。