アメリカの電気自動車(EV)メーカー、テスラ(TESLA)がトヨタ自動車を時価総額で抜いたのは7月3日であった。大ニュースになり、1550ドルくらいだったテスラの株価は、実力が伴わないバブルではないのかと疑問視する声も聞こえた。
それから1か月半ほどの今週木曜日に、テスラの株価は2,000ドルを突破した。
快進撃を続けるテスラとは、どんな会社なのか。
アメリカ経済の状況や、トヨタや日産との比較を交えながら、まとめてみる。
テスラのホームページをみると、EVはmodel S、model 3、model X、model YとCybertruckの5種類を販売している。そのほかにも、屋根に付ける太陽電池の販売に力を入れている。
EVについては販売実績が伸びてきて、ここ数年、値段を下げたモデルを投入し始めた状況のようだ。現在もっとも安い主力車種がmodel 3で、セダンクラス。ここでは、model 3に限定して話を進める。
model 3は、日本での値段は511万円~となっている。アメリカでの値段は$35,000からとのことで、日本円に直すと370万円くらいといったところだから、日本での値段はすこし高めの設定のようだ。
テスラの車体はどれもそうだが、スポーツ車らしい曲線的なボディで、従来の自動車と比べて突起が少なく、すっきりしている。
model 3は、満タン充電しておけば560㎞航続できる、30分の充電で270㎞走れるとのこと。
国産EVの日産リーフと比較してみよう。リーフは、一充電航続距離570㎞、急速充電時間60分とのことだから、バッテリーの性能は大差がないようだ。リーフの価格は安いモデルで330万円くらいなので、国内ではまだmodel 3の方が高い。ただ、リーフが通常の乗用車なのに対してmodel 3はスポーツカーで、簡単には比較ができない。
model 3のハイグレードのモデルは、時速261㎞まで出せるほか、静止状態から3.4秒で時速100㎞まで加速できるとのことである。
model 3に限らず、テスラの車体は未来的な外観だが、特にCybertruckというピックアップトラックのデザインは、SF映画から飛び出してきた自動車のようだ。
テスラの創始者にしてCEOのイーロン・マスクの名は知っている方も多いと思う。
言動が予想が付かないということで、話題が多い人物でもあるが、ここでは起業家、企業家としての凄さだけにとどめておく。
EVメーカーのテスラを起業し、現在まで率いてきただけでも凄いことだと思う。
けれども彼は、スペースX社のCEO兼CTOとしての顔も同時に持っている。スペースX社は、民間企業としてはじめて有人飛行を成功させた宇宙企業である。彼らが初めての有人ミッションを成功裏に完了したのは、テスラの株価が快進撃を続けるのと同じこの2020年の8月2日であった。(ちなみに、CEOはChief Executive Officer最高経営責任者、CTOはChief Technical Officer最高技術責任者の略だそうだ。)
さらには、イーロン・マスクはテスラやスペースXを手掛けるより前の1990年代に、アメリカのオンライン決済大手であるPayPalを起業していたのである。
多くの人が名前を知る超有名企業をすでに3社も設立し成功に導いていながら、まだ49歳なのだという。
イーロン・マスクは、真空チューブ鉄道という全く新しい技術による鉄道も提唱している。
次々にそれまでとはまったく違う新しい分野に進出し、競合他社よりも優れた技術を開発し、企業を成功に導いてきた人物なのである。
株価が好調なのは、テスラだけではない。
アメリカの幅広い産業をカバーする株価指数であるS&P500指数も、2-3月のコロナの影響による暴落から回復し、コロナ前の水準に戻り、8月18日には史上最高値を更新した。テスラの株価が2000ドル超えする2日前のことだった。S&P500は、日本でいうTOPIXのような指標である。
コロナによって、一時30%ほど下落した株価が、コロナ前よりも15%も高い水準にまで達しているのである。
世界でもっともコロナ感染者数、死者数が多かったアメリカでは、失業率も改善しはじめているとはいえまだまだ10%くらいの高い水準だ。が、少なくとも株価はものすごい勢いで回復してきている。
アメリカの株式指数を見たついでに、コロナの状況もおさらいしたい。拡大期は終わったのかどうか、気になるところである。
次のデータは、アメリカでのコロナ新規感染者数の推移である。
6-7月に感染が急拡大していたのが見て取れるが、この時期も株価が回復し続け、NASDAQに至っては史上最高値を更新し続けた。
7月下旬以来、収束の兆しが見えている。株価がバブルになっているのかどうかはわからないが、いまは米国内でのコロナの威力は薄れ始めているように見える。
テスラの株価上昇の勢いは、ものすごいものがある。
今週木曜日に2000ドルを初めて突破したわけだが、1000ドル前後だった7月はじめから1か月半で株価を2倍にしている。
コロナで底を付けた3月以来でいえば、4倍にもなっている。
EVという革新技術であり、ブランド力も増大している急成長の企業であることは確かだ。
一方で、バブルになっているのか、この勢いがどこまで続くのかは、とても気になるところである。
次節では、販売台数や利益のデータを見てみる。
では、テスラのデータを見てみよう。
時価総額とは株価に発行株式数を掛け合わせたもののことで、市場が企業の価値をどのように評価しているかを測る一つの指標である。
テスラは、時価総額でトヨタを抜いた後で、現在ではトヨタ、ホンダ、日産を併せた時価総額よりも高くなっているとのニュースも出ている。
テスラの時価総額は株価が2000ドルを超えた現在で、約3725億ドル(約39兆4500億円)である。
トヨタ自動車 23兆1085億円
ホンダ 4兆8002億円
日産自動車 1兆7705億円
だから、3社合わせると29兆6792億円で、たしかにテスラの時価総額の方が多い。
トヨタは、日本企業の中で時価総額は断トツ1位である。2位のソフトバンクが13兆801億円、3位以降は僅差でキーエンス、ソニー、NTTが続く。
テスラはそのトヨタの時価総額の1.7倍になった。
自動車のメーカーなのだから、販売台数は気になるところ。
テスラの年間販売台数の推移が、以下のグラフである。
四半期ごとに集計しているが、その四半期までの1年間で集計した数字である。
現在では年間40万台弱の販売台数で推移している。
トヨタの全世界での年間販売台数の推移が、次のグラフである。
ここ数年は900万台弱で推移しており、テスラの販売数はトヨタの5%くらいである。
販売台数だけを見れば、テスラの時価総額がトヨタをはるかに凌ぐというのは、説明が付かない。
トヨタは成長しきった企業であるのに対し、テスラは過去3年で販売台数を約4倍に伸ばしてきた急成長企業である。また、EVという新しくエコフレンドリーな技術と、それが世界の主流になっていくという期待もあるのかと思う。
EV同士でも販売台数を比較してみたい。データは、以下のページから頂いた。
2019年の世界でのEV販売台数は、モデル別ではテスラ model 3が約300千台で1位。約111千台だった中国BAIC ECシリーズの2位に続いて、日産リーフは70千台で3位だった。
この順番は2018年のランキングから変わっていない。ただ、前年度比で、テスラmodel 3は115%増、BAIC ECも20%増に比べ、日産リーフは20%減であった。
日産も、良い位置につけているので、国産メーカーとしてぜひ頑張ってほしい。
株価が年初以来4倍になり、今週木曜にはとうとう2000ドルを超えたテスラについて、アメリカ経済の動向、トヨタや日産との比較を交えてまとめてみた。
更新記録
2020年10月17日 「エスプレッソなおうち」へ移転。
2020年8月22日 「lulutheblackcat’s blog」にて公開。