バリュー投資のバイブルとして読み継がれるベンジャミン・グレアムの「賢明なる投資家」。
投資の名著として名高いこの書物の中には、大変有名になった寓話が出て来きます。
そうした投資の世界での有名寓話を原典を読めると思うと、投資の教科書としての本書の本筋の内容とは別にも、面白さがあります。
また、グレアムといえば、ウォーレン・バフェットの恩師でもあります。
バフェットやその他の有名投資家が、グレアムから絶大な影響を受けたことを、うかがい知りながら読むのも、本書を読む楽しみでもあるかと思います。
これらを読むだけのためでも、本書を手に取る価値はあるのではないかと思うくらいです。
まじめに書いたレビューは既に別記事にまとめてありますが、そこには相応しくないと判断して入れなかった本書の、内容に関する本質的な事項でなく副次的な面白さについて、本記事では紹介したいと思います。
読んでみようかどうか迷っている方がいらしたら、少しでも読むモチベーションになれば幸いです。
私は、正直に言って、投資初心者です。
初心者の私が読んでみた感想と経験に基づいて、「賢明なる投資家」をレビューしたのが、以下の記事です。
そこでは、以下のことを考えながらレビューをしましたので、ぜひ合わせて読んでいただければ幸いです。
私の全体的な印象は、読み方に工夫が必要かもしれないけれど、初心者の我々でも有益な読書になり得るという結論でした。
私の初心者としてのレベルについても、上のレビュー記事に、自己紹介を載せてありますので、疑問に思った方はそちらをご覧ください。
私が理解した「賢明なる投資家」の本質的な内容に関することは、レビュー記事で述べました。
本記事では、内容の本質には関係ないかもしれないけれど、とくに面白いと思った以下の事項に焦点を当ててを紹介したいと思います。
私が読んだのは、改訂第4版の日本語翻訳です。
2000年ごろに付けた注釈付きで、上下巻に分かれた「新賢明なる投資家」という本も出ていますが、私が読んだのはそちらではありません。
ただ、ここで述べる事項は、どちらの版で読んでも、共通なのだろうと思います。
今回は、目次を載せる必要はないと思います。
もし目次を確認したい方は、「賢明なる投資家」のレビュー記事 第3節 ”「賢明なる投資家」の章立て” をご覧ください。私は投資初心者ですが、何かの折に、以下のような例え話を読んだことがありました。
2億2千万人の全アメリカ国民が、1ドルずつ賭けてコイン投げをする。 毎朝一勝負ずつ行い、トーナメント形式で進行する。 10回目の勝負が終わると、約1000人あたりに1人ずつ、全部で22万人が勝ち残り、各々が1000ドルずつを手にする。 20回勝負した後では、約200人が各々、約100万ドルを手にしている。
多分非常に有名な例え話で、私のように見分が浅くても、この寓話に出会ったのは1回だけではないように思います。
そして本書を読むまでは、この寓話の結末がどうなるか、どういう趣旨の寓話なのかは、私は理解していませんでした。
寓話がどのように結末するかは、ネタバレになってしまうので、私からは言わないでおきます。
この寓話は、ウォーレン・バフェットが寄せた本書の補遺1がオリジナルな原典だったようです。
そして、本書に序文を寄せたウォーレン・バフェットが、この補遺も寄せていると思うと、バフェットの本書に対する思い入れというか、グレアムに対する感謝の気持ちが想像できます。
そして、この寓話にはじまる33ページにわたるバフェットによる補遺は、とても読みごたえがあり、バリュー投資をぜひマスターできるようになりたいモチベーションが高まる名文です。
この補遺の後半では、グレアムの門下生たちが素晴らしい投資成績を上げた人ばかりであることに話が移っていきます。
この6人の投資実績を、年毎のリターンのデータを表で提示しています。
S&P500の平均年間成長率が7-8%な中で、どれも15~30年の長い期間に亘り、平均リターンが20%を超える華々しい成果であることが、表で明示されます。
そして、全員がグレアムが教えるのと同じバリュー投資の手法に基づいて投資しているというのです。
この本に書いてあるエッセンスを身に着ければ、コンスタントに年リターン20%を続けるのも夢ではないのか!と思うと、難解な本書を読み進めるモチベーションも湧くというものです。
もっとも、例示されている6人の投資家たちの2人は、バフェットその人と、バフェットの経営上のパートナーであるチャールズ・マンガーです。
冷静にならずとも、毎年コンスタントに20%のリターンというのは、世界最高級の投資家の数字ですよね…。
グレアム・トッド村の、トッドは、グレアムが主宰していた証券会社の共同経営者だった人です。
二人ともコロンビア大学で投資を学問として教えていたとのことでもあります。
そして、バフェットはグレアムとはコロンビア大学で、教員―学生の間柄で知り合ったということです。
「ミスター・マーケット」という言葉も、投資の業界ではよく知られた例えなのだと思います。
Google検索でこの言葉を調べると、たくさんのページがヒットします。
この言葉も、本書の第8章が、オリジナルな原典のようです。
本書前半のハイライトである第8章の後半に、証券取引市場を擬人化しているものです。
そして、ミスター・マーケットはときに理性を失い、常軌を逸した価格を提示してくることがあること、彼の言動に左右されずに自分の考えをしっかりと持つ必要があることを説いています。
「ミスター・マーケット」と呼ばない場でも、「マーケットは理性を失っている」というような言い回しは、経済記事でよく目にするようです。
投資初心者の私は、本格的な投資本は、まだ本書と最近読み始めた本を含め、3冊しか読んでいません。それなのにすでに、2回も「ミスター・マーケット」の記述を他書で読んでいます。
本書を読む前に、ミスター・マーケットが毎日毎日家を訪ねて来て、取引を持ち掛けて来るという文章を読んだことがあります。
はじめて読んだ本格投資本だったハワード・マークス著「投資で一番大切な20の教え」だと思っていたのですが、いま本記事を書くために見返したら、該当箇所を見つけることができないでいるところです。
そんなこと、ほぼないと思うけど、この本でなかったのかなぁ…。
もう一か所は、今読み始めているピーター・リンチの「株で勝つ」です。
序章で早速、「ミスター・マーケット」という言葉に言及がありました。
リンチは、13年間にわたり平均29%という驚異的なリターンを記録した、伝説的なファンド・マネージャーです。
先にも述べた通り、私は本書の前に、ハワード・マークス著「投資で一番大切な20の教え」を読みました。
マークスはリーマン・ショックで最も稼いだ逆張りファンドを主宰する投資家です。
彼の本も逆張りによるバリュー投資が趣旨で、本の中でグレアム門下のウォーレン・バフェットに何度も言及しています。
バフェットも「投資で一番大切な20の教え」を絶賛し、株主総会で配ったという逸話も残っています。
書評などでも本書の趣旨に非常に似ていると書かれている場合も多いです。
そして、実際に両方読んでみたところ、主張していることがそっくりだと実感する箇所が、何か所も出てきました。
マークスは景気の浮き沈みのサイクルを「振り子」と表現し、著作の中では非常に重要なキーワードとして繰り返し、この言葉を使っています。
本書の第7章に、同じ意味で「振り子」という言葉が出てきたとき、マークスもきっと、本書を読み込んで勉強したんだろうと、ほとんど確信しました。
もっとも、私は日本語版で読んでいますので、本当に二人の言った「振り子」が同じ英単語なのかどうかは、確認していません。
「投資で一番大切な20の教え」のレビュー記事へのリンクは、本記事の最後に載せます。
ベンジャミン・グレアム著「賢明なる投資家」について、すでに別記事にレビューを書きました。(本記事の最後にリンクを載せます。)
ただしこの本は、有名な例え話が原典になっており、また著名投資家への強い影響を実感できるところなど、本来の内容だけでなく、副次的な楽しみ方がある投資本です。
本書が原典となっている例え話には次のものがあります。
前者は、ウォーレン・バフェットが寄せた非常に読みごたえがある補遺ですが、ここでは、その面白さと読み応えを紹介しました。
ミスター・マーケットも、著名投資家の著書にも出て来るなど、私が気が付いた面白みを紹介しました。
最後に、「投資で一番大切な20の教え」を書いたハワード・マークスは、非常に強く本書の影響を受けているのだろうと実感しながら、本書を読んだことも紹介しました。
ベンジャミン・グレアム著「賢明なる投資家」は以下から購入できます。素晴らしい投資の教科書です‼
「賢明なる投資家」を含め、バリュー投資の名著と名高い指南書4冊を、比較紹介した記事を書きました。
あわせて参考にしていただければ幸いです。